平成の「蟹工船」 メタボラ

桐野夏生さんのメタボラ

やっと、この小説の訴えたいことがわかったような気がした。
朝日新聞に長期に渡って連載され、単行本になった。
帯には破壊されつくした僕たちは、〈自分殺し〉の旅に出る。と。

連載中から主人公のある言葉が気になっていた。
人生はいつも、意外な形で終わりがくる。封を切った煙草。使いかけのパスネット。僕は父の最期を思い出し、はっとした。やっとわかったよ、父さん。」(朝日新聞社刊 メタボラ p591)
いったい何がわかったというのか。
連載が終わってからも気になってしょうがない。
だから単行本も買った。その箇所を読み返してみる。
しかし、どうしてもわからない。http://gakkokamen.at.webry.info/200705/article_31.html

集団自殺を企てたグループから、その決行中に一人逃げだし、ショックで記憶喪失になった青年の物語。
彼は、本当は、軟弱なくせに、精一杯背伸びして大人の世界に入り込もうとする少年と知り合い、彼とともにしばらく行動をともにする。
そして様々な人々との出会い、色々な経験をしてやがて過去を取り戻す。苦い思い出ー家族の離散やハケン先での過酷な体験、そして集団自殺へーが主人公を悩ます。

最近の不正規労働者の解雇の報道を聞いて、作者は、この作品で現在の状況を透徹した目で予測し、警告を発していたのではないかと思った。

知らぬ間に進行していた労働環境の悪化。
簡単にバサバサと切られる不正規労働者。
契約が解除されると住む場所までも失ってしまう。
どこかおかしい。

使用者は、仕事と住まいを提供し、労働者の福利厚生にも配慮していたというのだろう。でも、見方を変えればそれは上質な労働を確保するため。
労働組合は?労働団体は?労働者を保護する法制は?
時間外勤務させても手当を払わなくてもいい制度、さすがに成立しなかったけれど。危ない危ない。
http://gakkokamen.at.webry.info/200612/article_26.html

一生懸命生きても達成感の得られない社会、どこにも不満を持って行きようのない社会、いくら働いても楽にならない社会、将来の老後の安心感がいつまで経っても得られない社会、いつまでも続く閉塞感・・・・・・
きっとこういうことがわかったのだ

平成の「蟹工船」メタボラ。
優れた作品だと思う。

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