思い出のダンス

父が踊った最初で最後のチャールストン・・・・・

あれは七年前の一月頃だったろうか。
もうほとんど回復の見込みが無く、何ヶ月も食べることができなくて(空腹中枢がおかしくなって)、点滴だけで命をつないでいた。

 そんな時、東京の妹が父の見舞いにやって来た。
ベッドで静かに横たわる父に「父さん、仰向けで足を伸ばしっぱなしだと、床ずれができるよ。膝が立たないかな」

 布団の下がもぞもぞして、やがて膝が立った。
「ああ、立つんだ。すごいね。体力があるんだ。」と驚いたように妹が小さな声で言う。
「うん」と私。

 すると、膝がかたかた上下に動くではないか。
「父さん、どうした?」二人が同時に言う。
父「チャールストン」低いしゃがれた声で、でもはっきりと言う。
妹と私。思わず顔を見つめて、爆笑。
父は相変わらず表情を変えずに、かたかた。
やがて、うっすらとほほえみを浮かべて目を閉じた。
最初で最後のチャールストン。

 戦後、社交ダンスが流行したことがあったそうな。
その頃でも覚えたのだろうか。

 悔やまれることが一杯。

                     初出<< 作成日時 : 2005/03/02 21:33 >>

毎年今頃になると思い出される。
父の思い出。

この記事へのコメント

HT
2010年12月27日 03:05
こんばんは。
お父様との思い出話、良いお話でした。
私も父の思い出、時々思い出します。
何かあると、それと繋がると…。
何時までも消えない大切なものですよね。
2010年12月27日 21:03
HTさん
思い出は尽きません・・・・・
いい思い出と尽くせなかった思いと・・・・・

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